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サービスニュース-第55巻 第5号-1(売上げを伸ばせないのを人のせいにしないで)

2019年05月10日

売上げを伸ばせないのを人のせいにしないで

売上げが伸びないと、「今年は週末雨が多くて」とか「業界の規模が小さくなっているから」とか、他人事のように話される方が多くおられます。 業界を俯瞰して類推すると、天候不順や業界規模の縮小が売上を減少させているとは考えにくいのです。
これを類推して概略を述べると以下のようです。
 

〔天候不順と言うけれど〕

「今年は、天候が安定しなくてクリーニングの出方が安定しない・・・」、「今年は、防寒具の出方が・・・」、「この繁忙期に週末雨で・・・」とクリーニングの出方が安定しないのを、毎年のように天候不順のせいのように言われます。
しかし、ある程度の期間、天候が順調(平年並み)などというのは滅多に無いのです。何故ならば、比較される平年とは10年単位で、過去30年間の平均値を指します。おおざっぱに過去30年間の平均値です。
なので、今年気温の高い日が多くても、晴が続いても過去30年の平均値と比較してみれば天候不順なのです。
ようは、平年と比較する、昨年と比較する、何を比較対象するかによって答えは違ってくるのですが、滅多に同じということは無いのです。天候は不順なのです。
従って、今日は平年並みではない日の方が多くて、平年並みの方が珍しいのです。
天候不順を言い訳のにしないで、このような中でも売上を伸ばしている業者がいるので、そちらの方に注目をしてください。
 

〔業界規模は半分に〕

業界メディアでよく使われている言葉に「業界規模が半分になった」と言うのがあります。
これを、初めて聞けば「業界の規模」即ち、クリーニングの利用者が半分になったように聞こえるのです。でも、正しくは売上規模が半分程度になったのです。
実は、クリーニングに出されている商品数は85~90%は維持されているのです。このことは、タグの販売数が明らかに示しているはずなのですが、タグメーカーは公式には認めていません。非公式にお話ししてくれた内容から類推すると、上記のような数字なのです。(ダグメーカー3社の話です)
家庭で洗える物が多くなった、休日はクリーニングに出すような服を着なくなった、コインランドリーの利用者が多くなった、等々多くの市場変化を受けている中で、受注数の減少はこの程度なのです。
クリーニングの売上が減少しているのは、販売料金の下落(繰り返されるセール、値引率の増大等)、によるもので、いわば自分で自分の首を絞めた結果なのではと思えるのです。
※ある業者の方の発言に、「クリーニング・セールをやめたら直ぐに儲かるのに」と いうのがありました。
 

『何事にも先達のあらまほしきこと』

このセリフは徒然草の中にある話です。何事にも先達(先人)がいることは凄いことで、結果が見える、リスクが判るなど取り組みやすいと言っているのです。逆に云えば、先達のいないことは大変と言うことです。
ここに、原信太郎(元コクヨ専務)という人がいます。この方の人となりを紹介している本「あの駅に着いたら・・・」(中野順哉著、京田クリエーション制作)の中に素晴らしい一節があります。写真1。
P698・・・いざなぎ景気の頃注1)・・・世に出たばかりのクーラーを採用し、まず工場に導入しようと。
もちろん社内ではおおもめです。
「最初は社長室や役員室への導入ではないのか」しかし「夫」はがんとしてききません。
「いいですか。一番暑いところで働いているのは工員なんですよ。
本社の役員や社員は扇風機のある涼しいところで仕事をしているのだから、ク ーラーなんて要りません。」
「君は経営者の味方か!それとも労働者の味方か!」
重役からの非難ごうごう。それでも一歩もひかない。 結局「夫」の意見が通りました。
・・・中略・・・
「工場で働く人がけがをしないで快適に仕事ができる。
それが会社にとっても一番ありがたいことなんだ。暑くて汗がぽたぽた落ちる。
帳簿やノートは不良品になってしまう。涼しくて働きやすい環境だとロスも減る。
会社も儲かる。経営者も社員もすべてが幸せになれるんだよ」
クリーニング工場の多くでは、トイレが汚い、空調が未整備、休憩室が狭い等々、環境が整えられているとはお世辞にも言えません。
50年も前に、クーラーを率先して工場に導入して成功された会社(先達)あるのです。もっと先人に学ぶ姿勢をもってください。
注1)昭和40年(1965年)~昭和45年(19070年)の高度経 済成長をいざなぎ景気と称しました。
 

写真1-1 原信太郎を紹介している本
写真1-1 原信太郎を紹介している本

作り手に衣服のメンテナンスを知ってほしい

一夜限りのドレスでも無い限り、衣服は着用を繰り返すのが前提で作られなければなりません。即ち、着用⇔洗濯(洗浄・仕上)が行われることを考えて作られるべきなのです。
これは建築の「人の生活の場を考慮する住居」と「生活を考慮しない五重塔(モニュメント的建造物)」ほどの違いなのです。
しかし、現在の作り手の多くは、売るための・売れるための独自性・デザイン・着心地と価格には熱心に取り組むのですが、事メンテナンスとなるとお粗末なのです。
私が知る限り良心的に衣服作りに取り組まれている、「Factelier(ファクトリエ)」という会社の例を取り上げてみます。
 

〔紙で作られたシャツの例〕

私は、紙で作られたシャツ(ファクトリエ販売、オギタヘムト製)を着用しています。そのシャツの取扱表示の付記事項として、(写真1-3注1)のように書かれています。

 

写真1-2
写真1-2
写真1-3
写真1-3
写真1-4
写真1-4

注1)以下のように書かれています。
-このシャツの取り扱い方-
①シャツだけをネットに入れた洗濯をお勧めします。
②のりつけはしないで矢印の方向に引っぱって形を整えてください。
③高温、高湿プレスは避けソフトに仕上げてください。
④アイロンの際はあて布を使用ください。
⑤タンブル乾燥は縮みの原因になりますので、絶対にしないでください。
着用後、クリーニングに出したら、「衿」「前立て」「カフス」の縫い代部分にうっすらと当たりが出ました。
二度目から、家で洗って、アイロンせず(縫い代の当たりは見えません)に着用しました。
要するに、指示通りの洗濯を行わないと、当たりが出るということです。しかし、街のクリーニング屋さんで、カウンターがチェックし、工場が対処出来るところがどれほどあるでしょうか。
製品テストの段階でもうチョット、メンテナンスに配慮があっても良いような気がするのですが。
 

〔以下ファクトリエ・今治タオルのシャツより抜粋〕

洗濯の際はボタンを留め、網目の大きなネットに入れて洗濯してください。
ボタンダウンシャツの場合、襟先ボタンを外してから洗濯してください。
襟、袖口のしつこい汚れは、スティックタイプや霧吹きタイプの洗剤、もしくは、固形石鹸を汚れの部分に塗り、10〜15分ほど水につけ置きし、汚れを取ってから洗濯してください。
脱水は短く15〜30秒程度で十分です。
長時間の脱水は乾燥後のシワが残り易く、縮みの原因となりますのでお控えください。
タンブラー乾燥は、避けてください。
干す際は形を整え、すぐにハンガーにかけて陰干しをしてください。
■アイロンがけについて
中温(140度から160度)でおかけくだい。
一箇所で留めず動かしながらおかけください。
シミや汚れの上からアイロンを当てますと、芯地や繊維に汚れが浸透してしまいます。
頑固な汚れは、部分洗いをして汚れを落としてかおかけください。
■クリーニングについて
半乾きの状態で、高温、高湿プレスを繰り返しますと、型崩れ、ボタンや生地の劣化の原因になる場合がありますので、ご注意ください。
※洗濯はほぼ手洗いの状態です、乾燥は立体風幹、プレス、アイロンをす ると、縫い代の部分に当たりが出ます。
※家庭では簡単でも、クリーニングでは細心の注意が必要となります。
 

〔カウンターでの確認が必要です〕

以上2点のシャツ、いずれも指示通りの洗濯で、洗いざらしのシャツとしては感じが出てますが、衿がよれているのをどう感じるべきか迷っています。
クリーニングとしてはカウンターでの確認・相談注2)をすべきだと強く感じました。
注2)①プレス無しは手間を要するとこ。②アイロンすると多少の当たりが でること。③着用⇔洗濯の繰り返しは表面が白化すること等を説明。
※購入者は、良い物を買っているという意識が強くあるので、指示通りの 対処が「出来る」、出来ない」をはっきりと述べてください。

 

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